HEAVENLY TWINS
prologue
赤むらさきの空に、おおきなつみきが流れている。この国のBGMは、いつだって小さな星のかすれる音がしていた。
走馬灯のようにすぎ去る おそろしくねじ曲がったピエロの面や、うすくすりきった透明なゼリーの帯がひらりと舞うのをみて、まるで夢みたいだと思う。夢のような世界なのに、ここはひどくしずかだ。
なにかおそろしいものたちが全員なかよくピッタリと、息をひそめているような清潔さがしていた。
少女は 長いまばたきをする
「でも、わたしはすきだよ」
なまぬるく 永遠に低くなりつづける病院のオルゴールみたいなここが
すべてがうすもものベールにつつまれて、コントラストをひどく下げたようなこの国が。
となりの少女はゆらりと目をそらす
ここは、大人になるとみんないなくなる。
かろやかにほほえむ水際のような人も、
さよならをいうまえのはにかみのような人だって、みんないなくなってしまった。
むき出しの心臓を守るように、少女は額縁の中の女をなでる。
ふるえる手は、たしかに恍惚として
そのままふたりで、手をあわせた。
おとなになると きっと天上へゆくのだわ
「それって、しぬのと同じよ」
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