2023.0814
23 0814
歌で泣きそうになったから驚いた。人の歌で泣いたことは多分初めてだった。二年越し、喧嘩越しの再会。それは叫びで、主張で、しみじみと切なかった。これまで抱えられた想いが凝縮された祈りと怒りの歌。わたしへの想いは、こうだったのかって、やっと理解してしまった。こうまで重く深いなら、わかりたくはなかった。聴いているうちに滲んで、感動して泣いていたのだと後から気づいた。
歌は感情が思いきり入っていた。感情が歌をつくっていた。思っていたより高い声。荒い、原石が弾けてるみたいな。わたしが思うより二年後はなめらかで、浸透する。わたしから相手への好意が。もういることが当たり前という感じ。そばにいるのが当然で、離れていてもそれは変わらない。
二年越しに会ってみて、まるで離れていた感じがしなかった。会って驚きもときめきも気恥ずかしさも何もなかった。好きじゃないからそうなのか、とも思うけど、馴染むからだったのかな。高いヒールを履いているのにさらに高い身長は、別に安心もしないけどうれしかった。カラオケでは、昔のひとのことを想ってしまう時もあった。
花束。バックナンバーの単調なかなしさを示していた歌詞は、この人が歌うとこんなに情熱的に聞こえるのだと驚いた。呆れるほど失恋の歌が多い。わたしの知る歌ばかり探そうとする彼と、自分の好きな歌ばかり歌うわたしは二人の関係を象徴していた。
一触即発のような危うさなのに、何も壊れることはない。何年経ってもそれは変わらない。いろんな人に会って、君が一番わたしに合っていたんだとわかったって言った。それが全ての言いたいことだった。会えてうれしかった。もうわたしは何もできないから、会えて、最後に、楽しい時間を過ごせた。それだけで、もう精一杯赦しだったし、感謝してた。満足って心から思った。満ち足りた寂しい夜だった。でも身体を繋いでないのに、満ちるなんて、悲劇的でもあった。
ピアノの荒々しい音楽。ストリートのそれ。歌う歌は、選曲は偶然としても歌詞は二人ともお互いに伝えたい、主張したい、叫びたいことだった気がする。届かないとしても主張したかったんだ。未練タラタラの君と、前に進もうとしていることを見せつけたいようなわたし。
もう二度と 会えなくなるの? それがきけなかったの。
と、ゆきちゃんが歌っていた。
ゆきちゃんがわたしの言葉を代弁していた。ラバーソウル。これ一番好きなの。ずっときいてるの。といった。あとは、声がいいねって明菜ちゃんの歌でいってくれた。嬉しかった。二人とも声がチャームポイントだったよね。猫のあと、ドライフラワー、一緒に歌った。
いつか流行って、その時は多分別の人のことで泣いていた。君がいなくなった日々は面白いくらいつまらない。全力で忘れようとするけど、全身で君を求めてる。猫になったんだよな君は!君がいうから馬鹿みたいに似合ってる。そう思ってたんだよねずっと。わたしを忘れなかった唯一の人。なのに二人ずっと一緒になれない、忘れられない、どうかしている。わたしは君といれたらよかった。
ドライフラワーは交互に歌って、サビは毎回私になった。声も 顔も 不器用なとこも 全部、全部、嫌いじゃないの、音楽が止まって、わたしの叫びになった。わたし、君に好きになってもらえて、嬉しかった。
歩き疲れたら 叫び出して 暗闇を怖がるような 子どもの目に 映る虹は 壊れることを知らない
わたしはこう歌ったことを守っていくし、君は生き方に誇りを持ったまま、大きくなるんだろうな。一緒にならなくても、離れたとしても、遠くでがんばろう、いっしょに。綺麗な思い出でいようよ。抱いていようよ。
いい人見つかるよ。そうだね。わたしも前を向いて、過去を過去として理解して、思い出を抱いて暮らしてく。わたしのしたこと、許されなくていい。君が数少ない、人として私を見てくれた人だったということを、忘れないようにしたい。
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