2023.10.24 10:51「じゃあどうすればよかったんだろうね」思い出が遠ざかるたび連続していた波の音が鼓膜を震わせる雪の結晶としてそれは夢の中にいた幻燈だったし夏の火に灼けた虫たちのさざめきのように終わらない唄は後悔をまぶして遠くにいきたかったって言う 犬の瞼が、ありがとうをいうたび誇張されてゆく。大きく収縮したそれは自尊心と共に肥大してい...
2023.09.24 04:14クッキーが朽ちたらとりとめのないうた いつも景色ばかりが新しく過ぎる黄色い車の羅列の中に組み込まれている安心感まだ社会にいないことを錯覚できたこと 馬鹿みたいに降り注ぐ太陽は昨日を欠いた道標だったしそれは電柱が丸くたって変わらないことだった 流星がガタゴト鳴るたび無自覚さを思い知らされるクッキーの...
2023.06.05 07:14ミドルパレリオットあなたにとって青い海はただ 青いだけだとして丸みを帯びた電柱その様がわたしたちの行進を後押ししたとめどなく進むぎょう虫は碧い彦星の調べ遠ざかる風景がアルタイルの鍵盤を引きちぎって右足から溶けていった指が砂になるのと愛がきえるのは同じだったどちらも透けて月と翠のダンスを見送っていた...
2022.06.23 06:39逆流するプール 頭が痛かった。雨が降っても痛くならない頭が自慢だったのに、最近は調子が悪い。こうやって文字に起こすのも本当に久しぶりで、だって言葉なんてかけなかった。一時期妙子という名前があるだけでも言いようのない気味の悪さを感じて、だめだった。9771という記号になった。囚人のそれのような記...
2021.06.11 06:56きれいなケーキ きれいなケーキがあるどこをとってもかけがえのないそのかけらは、美しく珊瑚礁のようにひかる。 約三秒、そのまたたきは、あらゆる生きものを犠牲にする。犠牲のうえに成り立つ生はうつくしい。終りがない永遠のドレスコードはいずれ感情の終焉がくる。 美しくないものに命を与えたのは誰。途中下...
2021.06.03 11:55ミスリードをしてせんせい やさしいうたをうたってわたしが帰れなくなるようなうたをこもりうたをかんじて、忘れられなくして清らかだった、ノスタルジアゆびきりで切ったのは、わたしだったでしょ風のつよい日永遠にかえれない約束をとりつけたあなたとよみのくにから帰れなかったわたしは耐え難いほど しずかだった...
2021.05.24 13:40こぐまシャワーダーリン あたしを愛していて瑞々しい草木のうえからダーリン あたしを離さないでかわいらしいって褒めたたえてよきらきら瞬くあなたの虹から見つめたのはこぐまのまいご手と手を取り合って 絡みあえたらご愛嬌にっこり笑顔でまいりましょう天高く、空高く舞う こぐまのシャワー
2021.04.23 09:25詩「かえれない国」終わらない夢をみていた遠く離れた空 みえないみえなくしてくれたのは、君だったよねお天気にしたら嘘になると灰色のヴェールをかけてくれたのはきみだったよねそんな君が、透明になるなんて、ずるいと思う虹色の光線を殺して旅に出たあともう帰れなくていいと言ったのは君だったのにもうぼくは、どこ...
2021.01.26 11:19おしまいのうた「だって」 水際の針が落ちた。音もなく、湖は知り、天使のまぶたに触れるよりそっと。瞬間、呑み込む。ヒュッ、と、原子爆弾が眠りからさめるように。そのほとぼりが、層底に惹き込まれるように。 聖書が、わたしは聖書がほしくて、針をなげた。正当な対価は与えられずとも、知っているものだと思っ...
2021.01.23 03:49最悪な名前をつけて 夜、午前零時に目を瞑ってから午前3時まで眠れなかった。眠りにつく前、安部公房の「笑う月」の冒頭を読んだ。如何にして質の良い睡眠に入るかを西部劇を舞台に、流れるように綴っていた。しかしわたしは見事眠れず、午前3時にくまを抱いている。使い古されてくしゃ、とひしゃげたくまは安心の顔を...
2021.01.18 09:01惚けそしてただ朝がくるから起きて夜がくるから寝る。水の流れを数えて、もう何回目のノックをしたあと空咳。もう終わりだと思いながらレモンスカッシュの屋台を出す。透明な人間ばかりが足を運ぶ。幽霊が画を売って、暮らしてそうして灰になる。終わってしまった景色ばかりがシャッターを切る。心をとばしたホッ...
2021.01.16 14:51とんで、人魚包帯のこしてのこった傷跡だけが人の形をしていたあかるくきれいなそこは水飛沫をあげて軽やかに跳ねていてわたしは引き下がるどうしても、見てはいけないものみたいで氷の結晶割れたレンズに遠くの山をうつしてなげくあかるかったころの傷跡をなでているもう帰れなかった家の呼び鈴を鳴らしてひとり、...