かわいそうに!


「……もうしんでもいいですか」

 枯れ果てた芽に水をやるような目、でわたしを見る。まばたきが妙に美しく、わたしは「妙」の漢字の成り立ちを思い出す。

「死んだらいいんじゃないですかね。首尾よくここにデスノートもあります。」
「最悪……。死なないでってゆって。」

 へら、と笑って慈しむような。目が、吸い込むような惹きつけるような目が、わたしを脅かす。だめだよ。
君はやはり堂々としていて、それでいて挑戦的だった。そうかと思えば押せば倒れる抜け殻のようであり、壊れた骸骨のようでもあった。総じてみんな美しい目をしていた。そういう男だった。

「愛してる」

細胞ひとつひとつ。わたしが感じる脈動の始まりから終わりまでの全ての、ひとつひとつ。どうしようもなく熱を孕んで収縮して、そして途端、冷える。冷静な愛だった。わたしはわたしの愛と、真正面から対峙している。しずかな絶望の中で、あたたかい暗闇のなかで、君の目だけがたしかに光る。薄青く確かな、精錬の光。

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