記
正しくおしまいがくること、の怖さをあなどっていました。しかし単調なその響きは、地響きのようにやってくる。空は暗くなり、時計は頭を壊して逆巡りをする。ありがとう、と、言っていればよかったのかもしれません。あたかもそれが正しいことのように、正解を踏みにじって、わたしのものにしておけばよかった。
静寂が、勿忘草を撫でて、わたしはまた明日の意味を知る。
あかるい屋根。その明るさが、ちゃんとわたしをひとりにした。氷河急行の満員列車のように。
また明日も明日も懲りずにさようならをする。さようならをしたのなら、永遠に会えなければよかったのに。さようならをしたのに消えないなんて、最低だと思う。
隣国の、観覧車。終わらない歌をうたう、壊れかかったピエロ。かわいいサーカスに、透明な犬が並ぶ。連れ出してくれた、遠くの人を想う。遠かったから、幸せだった。幸せになっても、怒られなかった。
近くの人、心を赦したら、吞み込まれそうで、わたしは怖い。何も赦される気がしなかった。きっとすべてが罪だった。頭の大きなピエロ。罪に罪を重ねて、わたしは、見て見ぬふりをする。返しなさいと言われても、返さなかった。好きは嫌いで嫌いは好き。さようならはまた会おうね、ずっと一緒だよはさようなら。なにひとつ、ほんとうのことなんてなかったのに。
噓つきのわたしを赦すのは奥山の旅びと。わたしのことを、ものとすら思わない。ただそこにあっては流れてゆく、無限の旅びと。
わたしは、ゆびきりうたを歌って、「しにましょう」と言う。かわいそうなものに命を与えた、先生がいた。笑わない先生、言葉も発することはなく、しにましょう。呼吸と、一人きりの約束。楽しみですね、言った猫は、この世のものではない顔をしていた。
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