0725

 
何かを一心に見ていた。穴が開くほど見つめられたその先には求めていたものなど何もなく、ただふりつもってゆくのは頭の隅に弾き出された憎しみのかけら。

 ただ何かを憎んでだけいられたらそれでよかったのだと思う。憎んだその先に何もないのは何だって憎んでいないから。空虚な心が呼び寄せたものはまた同じ空虚であり、そしてそのことが、少女をたかぶらせた。

 アインシュタインのきれいな歌。国歌斉唱のあいまに響く、羽を落とした小鳥の嘆き。ひなげしが軽やかに鳴く時と、また海が遠吠えするのは共鳴していた。

 憎しみが無意味のものであると知るとき、人は観念して大人になる。大人になることを気づかせない役割のものはちゃんとあって、それがわたしたちの幇助をする。そういうことの重なり、偶然の連鎖によって大人になる。大人になるってかなしいことだ。

 ものを考えられなくなった今、何をこんなに恐れているのだろう。周りの同性の人間たち全て自分の敵のように見え、自分の住処は異性だけだと認識していたのを教えられるように。憎むから憎まれるのだ。それがわかっていてもなお、憎み続けるのは子供だから。大人になることを拒む愚かな子供のでしゃばりで、空虚にまた一を刻み、心の崩壊を防いでいる。

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