「じゃあどうすればよかったんだろうね」


思い出が遠ざかるたび
連続していた波の音が
鼓膜を震わせる

雪の結晶として
それは夢の中にいた幻燈だったし

夏の火に灼けた虫たちの
さざめきのように
終わらない唄は後悔をまぶして

遠くにいきたかったって言う



 犬の瞼が、ありがとうをいうたび誇張されてゆく。大きく収縮したそれは自尊心と共に肥大していって、まもなく見えなくなる。

 歌とひなげしの関連性について、5歳がまくしたてる演劇場の数々。それらは連続していて、雲の切れ目ひとつさえ、わたしを踊らせたと思う。


 いつも雪の中にいる。それを、かけがえのないことと思ってる。バスに揺られ、毎日を計算しながら、ある日一枚の紙を拾う。それがなんだったとしても、いつも、「しねばいいのに」と書いてある。なんでしが漢字でないのか、思ってそれで目が覚める。


 明け方の月が一番綺麗だって先生はゆってた。記憶の先生は、いつも嘘か本当かわからないことをいう。ひなげしがちりぢりになる。わたしはどこへ帰ればいいのかわからなくなる。夢の中にいたかった、という伝言は、ルージュみたいに電車に轢かれて消えるんだよね。じゃあどうすればよかったんだろう。いつもこういうことを考えてる。


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