とんで、人魚
包帯のこしてのこった傷跡
だけが人の形をしていた
あかるくきれいなそこは
水飛沫をあげて軽やかに跳ねていて
わたしは引き下がる
どうしても、見てはいけないものみたいで
氷の結晶
割れたレンズに遠くの山をうつして
なげく
あかるかったころの傷跡をなでている
もう帰れなかった家の呼び鈴を鳴らして
ひとり、うすく、どうでもよくなった
おもちゃを握り崩して
「ありがとう」っていった
耐えられないほど
やさしいきもちになった
花畑がみえる
人形たちが、はねてはかえす
もう帰れないと思う
石炭袋で降りた
ジョバンニのなりはて
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