喧騒の冬


 いつだってないものを欲しがった。失った自分を探し求めるから欲しがるなんて、嘘だと思う。それが好きとか愛してるとかって、じゃあ自分なしには生まれなかったことになる。それはそう。

 満月が怖くなったのはいつから。光るものが、自分とはいつからか思えなくなっていた。輝くそれを自分の故郷に思えていたのはどうして。孤独だったから同じようにひとりきりなお月さまを愛した、ただそれだけ。

 新しい出会いと転がっては落ちて拾って落ちてを繰り返すびいだまをながめる。どちらがどうなどではなかった。今があって昔がある。通りすぎた今とこれからくる過去。いつもいつものくりかえし。きっといつだって同じ道を選ぶのなら、今手に宿したこれはなに。

 炉端のうさぎは眼を細める。しずかな瞳でわたしを見る。こごえるほど冷め切った朱色のびいだま。わたしの手は、左端から崩れて散る。
 おいでと言う。やさしい声色。もうなにも怖くないというような、わたしだけを愛す力強い。「おめでとう」もう必要ないからと、譲られたリードは行き場を失って。

 神風ばかりが吹く水上の街で、ただ指を天に掲げるのはまほろばの私。ただそれだけ。ただずっと、そういうことの繰り返しだった。またうさぎは笑う。私は手を崩さなければならない。「おめでとう」拍手の紙吹雪が散る喧騒の冬、わたしはまたひとりになる。

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