7.16
知識をただひたすら詰め込んでいく作業、それは安心なことだった。無駄なことは考えずにすみ、それは意味のある行動になる。心もとなげな空、簡素で質の良い椅子、空中に浮かんだようなガラス張りの空間とカウンター。ふと、わたしは自分を傍観していることに気づいた。きっとこうやって大丈夫になっていく。昨日あまりの寂しさで張り裂けそうだと思っていたばかりなのに、もうこうして優雅にくつろぐ。そういう自分の感情の動きについていけなかった。勝手に歩きだす動物みたい、と思う。あるいは動物の形をした何か。
ピンクの骨です、とわらう。ピンクの骨になった私のかわいい過去の犬。病気がそうさせたのなら、私もいつかは色のついた存在になりたい。緑、赤、ゴールド。決してピンクではない、別な色に。
高層階にいるのは楽しいことだった。ひとりでも勇敢な気がした。鬼ごっこの時、ジャングルジムのてっぺんにいたときの感覚に似ていた。不安で、かすかな希望があり、確実な自由の感触。わたしは、自由だった。こういうことを、確かめるように、言い聞かせるように反芻しては傍観していた。
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