たぶんともだち *


 たぶん友だちなんだろうなと思う。
この一行だけでしんでしまいそうなくらいぽかんと穴が空くけど、でも愛してるとかじゃなかった。おそらく好きでもない。ちゃんとなにかを愛することをしてこなかったからこの年になってどうしていいかわからない。

 好きになったりそういう感じになったとき逃げたのは幸せをおそれたからですか。そうなってはいけない、よりも未知が怖かったからですかそれとも、未知を失って自身がかわってしまうのを恐れたからですか。

 たぶん友だちなんだと思う、と投げたのは思いこみたかったせいだった。期待するのはこわく、なんだわたしだけだったんだねとなるのが透けてみえた気がしたのだ。なんではじめから悪い方に考えるんだろう。今日立ち寄ったミスドのフレンチクルーラーを思いだす。仲がいいねといわれた。りんとK、めちゃくちゃ仲良いじゃん。へらとしてたけど内心うわぁと思っていた。

 仲がいいというより居心地がよくて、そうだね恋愛において居心地のよさは二番目くらいに大切だと思う。でも昔の好きな人には及ばなかった。たぶんあの人が一番わたしに合っていた。今だからいえるとかじゃない。当時も本気でそう思っていた。わたしたちは溶けあうくらい安心しきっていたのだ。

 結局、こんな風に煩悶するのが好き。絶対手にとどかないようなものをわざと好きになってこっちにこないようにしてるのが好き。だって分かってしまうのはとてもこわい。手が届かないから好きなのであって、届いてしまったら好きじゃない。なんだこれとも思う。だからこれは愛じゃない。ただ折れ曲がった娯楽の延長線、かなしいことにわたしはそんな恋しかできなかった。

 武士みたいな人間とつき合いたいと本気で思っている。江國香織の『草之丞の話』にでてくる侍とか特にタイプだった。
 なおらないんだろうな。そして遊びつづけるんだろうな、現にアプローチしてくれる人にわたしはなんの魅力も感じることができてない。最悪だと思う。申し訳ないとも思うけど、でもこれはわたしの人生であってきみの人生じゃない。わかり合うことはむつかしい。毎日をふらふらと暮らすことでしかわたしはわたしを保てないよ。

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