日記
とびうおを数えてた。こんな状況になる前、友だちと海に行った。今宿ってところにある小さい海。そんなに綺麗じゃないけど、親子が潮ひがりをして、遠くにヨットがみえた。水際に近づくと海藻とイカの骨がゆれて小さい泡ができた。
友だちとは卒業ぶりに会って、なにも変わらなくて嬉しかった。人と会わなすぎて心がしんで、駅に行くまでぼんやりしてた。駅についたらわくわくして、化粧室で変じゃないかなって髪をといたり、メイクのチェックとかをしてた。
デートで早くついたときってこんな感じなのかなって思いながらベンチに座ったり立ったりする。それくらい人に会うのがうれしかった。この時は2ヶ月くらいだったけど、今は半年くらい会ってないから今友だちに会ったら5時間前くらいに着いてしまうかもしれない。
しらない町は全部がたのしかった。しらないってだけで簡単にすべて輝いてみえた。YUKIちゃんの「世界はただ、輝いて」を思いだす。YUKIちゃんがこれまでにつくってきた唄がきらきら散りばめられてて、ほんとに美しかった。ゆきちゃん大好きなんだよね。天真爛漫で元気でかわいくて、ポジティブでほんとに女の子らしくて、憧れ。高校生のときからずっとゆきちゃんになりたい。
ゆきちゃんのエッセイで「友達」ってタイトルの詩があってね、
会いたいときに、会う。会いたくないときは、会わない。
会っているときは、楽しく。会っていないときは、ひとりで楽しく。
大好きなの…。友だちとの時間を素敵なものにしようって思うゆきちゃんも好きだし、ひとりの時も楽しくいようって思えるのも、全部めちゃくちゃ愛してる。ゆきちゃんってちゃんとひとりで完結するから好き。相対的じゃなく、絶対的な自分をもってるから好き。信じてるものがあればどこまでだって強くなれるよ。
海辺でふらふらしたあとは町の散策をした。道路のせまさに轢かれそうになったり、同じ道を通って迷ったり、用水路をおよぐ魚をみて笑ったりした。ずっと楽しかった。たい焼き屋さんでつぶあんを買って、工事のおじさんと一緒にたべた。
とびうおを数えた。堤防に座って海をみてた。魚が水の表面をはじくのがおかしくて、もう夕方なのに水面はまぶしく太陽をかえして、時間とまったかもしれないって思った。だってテルーの唄なんて流すんだもん。そりゃとまるよ。
薄くもやのかかった海辺はありえないくらい神聖で、嘘みたいにみえた。すこし声をだしたら破れそうで、ふたりともしばらく声を忘れていた。
「あっ今日料理の日」
「お姉ちゃんじゃなくて?」
「うん」
姉妹二人暮らしの友だちは料理当番で、買いもの忘れてたみたいなことをいった。
「最近ご飯たべんこと多いのよね」
「なんで」
「つくるけど不味いけん食べんくなった」
「うける」
わたしが作りに行くよっていったらあんためちゃくちゃでかい卵焼きしかつくらんけん嫌っていわれた。失礼やん!卵焼き以外もつくるよ!たぶんお泊まりの時わたしが喜ぶかなって思ってつくった卵焼きのこと言ってるんだろうな…。大きければいいってもんじゃないよ(戒め)
しらない学生たちの自転車が聞こえて、なんとなく怖くなって、大笑いしながらふたりで海から逃げた。迷路みたいな小路を抜けるとミニストップがあって、笑いながらソフトクリームを買った。とけるよ〜!っていいながらじゃり道をかけた。楽しすぎて全部どうでもよかった。ほんとにどうでもよかった。友だちは真っ赤な顔をして、ソフトクリームもって海まで走ってるの絶対わたしたちだけじゃんって笑う。
しずかだった。やっぱりとびうおを数えてた。もう何十匹目。ヨットはすでにいなくなっていた。あなたは帰ったらご飯つくらないといけないし、わたしは妹のゼッケンを縫わないといけない。帰りたくないなって思いながらふたりでいるのって綺麗なんだね。
ずっと変な話ばっかりしてたのに、急にしんとして、目が泳いで、合って、「今日楽しかった?」って逸らす。恥ずかしいこと聞くねって笑った。言わなくてもわたし、君といたらどこでも楽しいんだけどな。だって好きじゃないと会いたいなんていわないよ。
帰るときは既に日が落ちてて、離れたくないなって思った。でも家は好きだからやっぱり帰る。そんなこといってたらどっちよって笑われた。わたしもわたしのことわかんないし犬飼いたい。最後は映画の「Shane」みたいな別れ方した。
なんでこの日のこと思いだしたんだろう。わたしどんどん目が悪くなってゆくよ。わがままかな、わかんなくなったら教えてほしい。わたしも君が疲れたら飛んでいくから、君もわたしがだめになったら泣くな女だろっていってね。
0コメント